「そと川りんご園」の御案内

2005年5月22日 訪問記
 昨年の10月以来、久しぶりに「そと川りんご園」さんへお邪魔してきました。昨秋はまさに収穫間近のリンゴがたくさんついており、赤が非常に目立ったのですが、今回は「白」。リンゴの開花の季節を迎え、白と緑が映えていました。
 外川社長に園内を案内して貰うと、プ〜ンと、かすかないい香りがしてきたのでお尋ねすると「リンゴの花の香りです。いい匂いでしょ」との返事。注意して鼻をクンクンしないと、気が付かないような香りですが、初めてリンゴの香りを体験しました。

 さて、私の目には満開に映ったのですが、もう時期は過ぎたのだそうで、今後は花に見とれる間もなく「摘花」作業で徐々に忙しくなるそうです。リンゴの花は1ブロックに5〜6個の花が咲きますが、中心花(このグループの中で真ん中の花。コレが将来、実になる)一つだけ残して、他の花を摘み取ります。なんかもったいない気がしますが、この摘花をすることによって、栄養が行き届いたおいしくて立派なリンゴの実がなるわけです。この作業は人の手によって、花が咲き始める5月中旬から始まり、花が既に無くなった夏間近(7月下旬)までたっぷり時間をかけて行われるとのこと。東京ドーム2個分というとんでもない面積ですから、大変な作業なのは言うまでもありません。いろんな方々に協力していただいて、毎年、行っているそうです。

 GW明けから不順天候が続き、リンゴの成育に影響が出ていないのか心配して聞いてみると、稲作や畑作と違って、さほど深刻な状況にはないものの、霜が少し気になるとのこと。ただ、それも今のところ降りていないので、まずまず順調だそうです。
 それよりも今冬の豪雪により枝折れの被害が出たことにショックを受けてました。今年ようやく収穫出来る予定の3〜4年木が多数折られたそうで、春先はそれらの処置で忙しかったとのこと。広い園地ゆえ、除雪など到底不可能で、ひたすら成り行きを見守るしかなかったのが辛かったようです。

 この時期、人も忙しいですが、昆虫も大忙し。マメコバチが花から花へ飛び回り、授粉の手伝いをしていました。最近のマメコバチは、軟弱になったのか(笑)?陽の当たる花を選んで停まり、日陰の花は寒いからか敬遠され、人の手によって受粉してやらないといけないのだそうです。ハチも人と同様、平和ボケして、楽なほうへ走りやすい傾向があるのかと笑ってしまいました。でも、マメコバチの貢献度はかなりなもので、随分、助けられていると申してました。

 園内を歩いていると、グルグルにねじれたベテランの木が目に留まりました。なぜこうなるのか?  答えを聞いて、納得しました。リンゴの実が大きくなるにつれて枝は少しずつ重量を感じるようになって、少しずつねじれていき、それが毎年続けられると、そのようになるのだとか。花が咲いてから実が出来る半年の間に枝にかかる重量は相当な差があるのでしょうね。リンゴの木が横に広がるのは、やはりこのような理由からなのだと思います。枝の踏ん張りには思わず、拍手です。
 また、収穫の時、リンゴをもぎ取っていくと、次第にその重量から開放された枝がバネのように上に向かって跳ね返る事があり、そんな時、木の上の方で収穫作業をしている人がはたかれる事もあるのだそうです。

 次に1年木と2年木のエリアに案内されました。驚いた事にリンゴの木は、他の種類の木に接ぎ木して大人になるんです。“丸葉海棠(マルハカイドウ):バラ科の木”とか“わいせい台”などという台木(だいぎ)にリンゴの小枝を接ぎ木して、大人のリンゴの木になっていくと聞かされ、耳を疑いました。他の木にパラサイトして成長していくなんて、私には信じられませんでした。とはいえ、これはリンゴに限った事ではなく、他の果物でもよくあるのだそうです。う〜ん、確かスイカもそうだと言ってたような……。

 リンゴの成長は著しく早くて、たった1年ほどで150〜160cmになるんですから、これもまた驚きです。3〜4年で収穫も可能ということで、効率が良いと言えるのではないでしょうか?

 今後は病気と秋の台風に気をつけて、収穫の日を迎える事になりますが、外川社長は「台風で実が落ちるのは自然が相手だけに、止めようもなく諦めざるを得ないが、病害虫被害は情報をしっかりキャッチして対処さえ間違えなければ十分防げるのでコレで打撃を受けると非常に悔やまれる」と話していました。

 今後も時期を見て、園地を訪問し、リポートしていきたいと思います。御期待ください。

↑桜に負けないほど立派な花です。ちょうど前日、今年の13代ミスりんごの花3名が決まり、報道されてました。
↑摘花のお手伝いに来ていた御夫婦。御主人はサラリーマンを退職して奥様と仲良くお手伝いに来ているのだそうです。いいねぇ〜。
↑リンゴ園からは岩木山が良く見えました。普段、狭苦しい部屋で仕事をしている身としては実に健康的に思える。
↑マメコバチ小屋。ハエかと思ったら、マメコバチでした。刺さないが、時々、機嫌が悪いと噛むとのこと。でも大丈夫でしたよ。
↑雪によって枝が折られた部分。人間同様、傷口から黴菌が入らないように、しっかり薬(緑色)が塗られてました。
↑長年の出産(収穫)でねじれてしまったベテランの木。枝にかかるリンゴの実の重量は凄いらしい。
↑下側の茶色い木は丸葉海棠(マルハカイドウ)というバラ科の木でして、これに若葉が付いたリンゴの小枝を接ぎ木して、リンゴの大人の木が作られる。
↑別なお母さんの元ですくすくと育ったリンゴの小枝はわずか1年で高さ150〜160センチほどに成長する。2〜3年後、植え替えられて外川社長へお礼をします(笑)。
↑リンゴは寒冷地に育つ果物なので、不順天候はあまり影響がない。ただし霜はいけない。今年はまだ霜害がなくて助かっているそうです。

2004年10月2日 訪問記
 青森県南津軽郡平賀町にある「そと川りんご園」へ行ってきました。青森市からは東北自動車道を利用して約40分。黒石ICで降り、南下すること約7キロで到着します。
 早生のリンゴは既に収穫が始まり、この後、王林、ジョナゴールド、フジ等が順次、収穫の時を迎えます。そんな忙しい中、「そと川りんご園」の若き代表取締役、外川清孝さんに時間を取っていただいて、園内を案内してもらい、いろいろと勉強してきました。
 日本一のリンゴ生産県に住んでいながら、実際に園地へ入るのは生まれて初めて。今回、伺ったところは3町歩。少し離れたところにもあり、トータルだと9町歩だそうで、当初、ピンと来なかったんですが、次の言葉ですぐわかりました。
 「東京ドームは4.5町歩あることから、二個分です」うへぇ〜、こりゃ、でかい。
 これだけの面積がありながら、わずか10名ちょっとの人間で収穫すると聞き、とても驚きました。どのようにして収穫するのか?には、1本の木に3名ほどがあたり、木の上部、中部、下部に分担し、手際良く実をもいでいくのだとか。朝7時から始まって、午後4〜5時までの作業が連日、続くようです。

 リンゴは、とっても肌に良いのは御存知だと思いますが、それを裏付けるかのようにアトピー性皮膚炎などのアレルギーにも効き目があります。よって、外川さんのお宅では、このようなアレルギーで悩む人が居ないそうです。ところが、ところが、笑ってしまったのは(失礼)、花粉症になってしまう人がいるということ。リンゴの木の下に増える雑草から出る花粉が原因のようです。それもこれも除草剤などを使わないためなのでしょう。出荷の契約をしている某店の農薬基準は非常に厳しく(県の基準よりも厳しい)、それとまた、消費者の意向もあり、農薬は、必要最小限に抑えて生産しているそうです。

↑平賀町広船にある「そと川りんご園」にはカーナビの力を借りても辿り着けませんでした。広すぎて入り口まで表示してくれない。
SOSを発信して迎えに来て貰いましたが、目印は真っ赤な鳥居が良く目立つ広船神社でした。リンゴ以上に赤かった。
↑傾斜地に広がるりんご園。細めの坂道を登ると、突然、作業小屋と沢山の実を付けたブドウ、リンゴの木が目に飛び込んできました。「この園地は3町歩の面積(約1万坪:我があすぱむ屋敷150個分)」にビックリ。見回りに歩くだけで良い運動になります。
↑平成5年春に受賞したという澁川傳次郎賞受賞記念碑が入り口にデンと立ち、誇らしげに迎えてくれました。澁川傳次郎とは、青森りんごの戦後復興に深く関わった人物で、優秀なりんご生産者等に、この名誉ある賞が与えられます。
 
↑緑のリンゴ・・いや、一般的には青いリンゴと言いますが、コレは王林(おうりん)と言います。ほとんどの木には台風などの影響を極力抑えるように支柱が添えられており、それぞれが細いワイヤーで繋がっています。
↑それぞれの木は、1本辺り4×2mの面積を確保するように植えられてますが、作業用道路以外は立すいの余地もないほどリンゴの木で埋まってました。
↑東京ドーム2個分の園地には果たして何本の木があるのか?と尋ねたら「わかりません」と返事が返ってきた。そりゃ、そうですよね。規模の大きさをまだ理解していない愚問でした(笑)。
 
↑リンゴのもぎ取り方を教えて貰いました。ねじったり、引っ張ったりするのではなかなか取れにくく、丸印で囲んだ、やや膨らみのある部分を指の腹で軽く押すと、ポキッという音とともに簡単に取れます。
↑リンゴはバラ科に属すると聞いて驚きました。皆さん、知ってましたか?また、種を土に植えてもほとんど成長せず、実は育たないそうです。これにも驚嘆。冷涼な気候が適しており、それから比べると今年は夏が暑かったため、ちょっとだけ条件が悪いとのこと。
↑TVドラマ等の撮影で俳優さんにまんべんなく光が届くように銀板で太陽光を反射させたりしますが、あれと同じで、木の下に敷いた銀色のシートは、リンゴを均一に赤くするための、いわば日焼けシートってとこでしょうか?逆に日焼けし過ぎないよう袋をかぶせたりもします。
 
↑補植苗(ほしょくなえ)。リンゴは苗木から育てますが、春先に約20cmほどだったものが、もう既に大人の男性ほどの高さに。来年か再来年、植え替えられて活躍が始まるそうです。わずか3〜4年で実がなると聞き、その早熟さに驚きました。
↑枝には添え木(赤矢印)が付けられてました。枝は上下左右に揺すられることで、折れるのだそうで、添え木によって台風などの強風被害から守るそうです。そこまで対策を立てても……→右の項目へ
↑強い風が吹いた台風16号(2004年8月末)では落果被害が発生し、60箱くらいがご覧のように積み上げられてました。自然から恵みを受ける者は、自然からの恐怖も受け入れねばならないのでしょうね。
 
↑このプロペラ、春先などに霜が降りそうな時に作動させます。大気には冷たい層と、若干それより暖かい層があって、回転させることで空気の層を掻き回し、冷たい層をなるべく減らすのだそうです。
↑スキーの腕前はオリンピック・レベルという大変なスポーツマンの外川社長。シーズン中は約40回ほど大鰐スキー場へ通うとか。それでも回数を抑えてるそうで、黙ってれば見境なく毎日行ってるかもしれない(笑)。
↑作業小屋入り口の上にリンゴ箱が?奇麗にアシガヤがビッシリ刺さってます。答えは授粉の手伝いをしてくれるマメコバチの巣でした。現在は卵が沢山入っており、来春の出番が来るまでジッとアシガヤの中で、その時を待ちます。
 
↑園入り口のブドウ(スチューベン)をお土産にいただきました(リンゴも同様:ありがとうございます、外川さん)。
見学者がコレを見て「ワァ〜、素敵なブドウ園ねぇ〜」と言う時があり、思わず苦笑するそうです。
↑王林に変わって期待される新星、トキ。糖度が15度以上になるという甘口のリンゴです。通常は高くても12〜13度。試食しましたが、糖度が高いのは当然ですが酸味が少なく、甘かった。市場へ一般的に出回るには、まだ少し時間がかかるとのことです。
↑こちら、早生のフジ。糖度は13度くらい。約一ヶ月後の11月初旬からは、本来のフジの収穫が始まり、時折、雪がちらつく20日前後くらいですべてのリンゴ生産が終了する予定だそうです。
 

 有限会社「そと川りんご園」DATA
〒036-0131
青森県南津軽郡平賀町広船字広沢93
TEL 0172-44-2029
FAX 0172-44-1216
代表取締役 外川 清孝

ホームページ
http://www.sotokawa.com/

↑記念撮影をしようにもシャッターを押してくれる人が居なかったので、思案しておったところへ、お知り合いの方がタイミング良く訪れ、お願いしました。なぜか、私、偉そうなポーズを取ってますねぇ〜。普段は単独取材が多いのですが、今回は果物と花が好きな妻が積極的に同行を願い出ました。とても満足してました。私も同様です。

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