MLB Tour '98
このMLB観戦記は、1998年8月28日〜9月2日までの六日間、全米の3都市(ニューヨーク、ボストン、アトランタ)を移動して見て歩いた時の模様を書いたものです。ニフティー・サーブで知りあったパソコン通信仲間の水夫さん(ハンドルネーム)と2人だけでプランした、全く自由奔放な旅日記であり、道中はさまざまな失敗の連続だった。なお、この観戦記は当時、ニフティーの野球フォーラム(現在はなくなった)でも発表しましたが、ここに改めて掲載することとなり一部の字句訂正や修正を行なっています。
★出国編 8月28日★
ただいまより“あすぱむ”改め弥次と“水夫”改め喜多の「MLBツアー見てある記」の始まり始まりぃ〜。
♪チャンチャカチャンチャン、アンポンタンまずは出発当日のお話から。
弥次は前日来、TVなどで報じていた栃木県の集中豪雨に不安を抱えながら雨降る青森を出発。お昼頃、被災の地、那須付近にさしかかった。徐行した新幹線の窓から見えたのは茶色い大きな湖だった。「ほへぇ〜、こりゃ、てぇ〜へんだな。めげずに頑張っておくんなさいまし」とつぶやいた。
無事、成田に着くことができ、喜多さんと久方ぶりの再会。搭乗手続きなるものを終えて、荷物も軽くなったことから、まずは空港内の酒場に入り麦酒で乾杯。
「プファァ〜、うんめぇ〜」最新事情に詳しい喜多さんの話によると“鉄の鳥”みたいなものに乗って行くと言う。「へぇ〜、世の中、便利になったもんだねぇ。おまけにメシはタダ、麦酒もタダ、ほんでまた、ベッピンのおねぇさんが世話をしてくれるってんでうれしくなったねぇ。長生きはするもんだ」と弥次、御満悦。
午後5時過ぎ、ついに“鉄の鳥1号”が飛び立つ。それにしても椅子が狭い。
「これで15時間近くも“あとらんた”まで行くわけ?……」と、そこへ、ボー・ジャクソン(NFLとMLBの2大スポーツで大活躍した偉大な元選手)みたいなガッシリした黒人が通り掛かった。
「へぇ〜〜、あんな外人さんも文句ひとつ言わず乗ってんぁ〜。しょうがねぇ、おれもミッポン男児だぁ、辛抱して我慢するとすっか」と弥次。この後、機内食をペロリ平らげ、ビールでほろ酔い気分となり御機嫌の弥次喜多。
弥次「暇だなぁ、軍事将棋でも指さねぇか?」喜多「いやいや、映画が始まるから見ようじゃねぇか」
弥次「どれどれ」喜多「たいたにっくだ!あっしはまだ見てねぇ〜んでゲス」弥次「おぉ〜、てれびで宣伝しとった船が沈没するってヤツじゃな、コレもタダかい?儲かったなぁ、喜多さん、ありがとよ。でも沈没とか落ちるとか縁起でもねぇなぁ。ちょっくら機長に説教してくらぁ」喜多「こらこら、やめなよ。おとなしく見てろっつうの」映画「タイタニック」終了。
弥次「泣けるねぇ。ワシはあの“でかぷりお”が可哀想でなんねぇ。それに比べてあの成金は許せん。実に悪いヤツ」
喜多「まぁまぁ、そんなにマジにならんでも。どうせ作りモノじゃから」弥次「わしゃ寝る」喜多「デザートが出るようじゃ」弥次「う〜ん、眠い。でももったいないから食うか」弥次「喜多さんや、今、何時?」喜多「♪そうねぇ〜、だいたいねぇ〜・・・ちゃうやん、それ。え〜と、アメリカ時間の夕方5時頃じゃよ」弥次「な、な、な、なぁ〜んと!ミッポンを出てから大分たつというのに出たときと時刻が同じじゃねぇ〜かい」喜多「弥次さんもモノを知らねぇなぁ。ミッポンとアメリカでは、昼と夜がほぼ反対で“鉄の鳥”が半日も飛べばどうなるかわからんのかい?頭が弱いんじゃから」弥次「すまんのぉ。それにしても出たのが28日午後5時、今も28日午後5時ってぇ〜ことは、今日一日分、得したってことか、エヘヘヘ」
喜多(ポツリと)「帰る時はその逆だということも知らんで幸せなヤツじゃ」
デルタ航空056便はNYへの直行便でないためアトランタにまず到着した。
弥次「ココはヌーヨークじゃねぇぞ」喜多「弥次さん、早く。乗り換えるんだよ。“鉄の鳥”が30分遅れたんで乗り継ぎの時間が1時間しかないんだから、早く」弥次「一服もできねぇのかい?はい、はい」
麻薬捜査犬に驚き、入国審査では前の人が時間がかかり喜多はしだいに焦った。
弥次「なんじゃい、いるみねーしょん、ってのは?」喜多「違う!イミグレーション!」弥次「なぁ〜んだ、いるみね〜しょんで良かったんじゃねぇか」喜多「あちゃ〜、もう、いい」
弥次は入国審査官の質問に教科書通り無事「さいとすぅ〜いんぐ」「しっくす・でいず」「ぬーよーく」と答えることができゲートをくぐることができた。
「わしも晴れてあめりか人になった」と満足気な弥次とは対照的に喜多は残り30分しかないNYへの出発時刻が気になっていた。搭乗手続きと電車を乗り継いで機内に入ったのが10分前。
弥次「ふぅ〜、走ってんのは、わしらだけじゃったぞ」喜多「いいの、とにかく間に合って良かった、ふぅ〜」
まもなく“鉄の鳥2号”が空へ。約2時間のフライトを終えて、午後8:50頃、ついにラ・ガーディア空港に着陸。
日本を離れて約15時間、自宅を出てから約25時間。長い空の旅だった。弥次「やっと来たのぉ〜、嬉しいのぉ」喜多「ほんと」弥次「取りあえず煙草を吸わんかいのぉ〜」喜多「よっしゃ」
プゥ〜、ファ〜、プゥ〜、ハァ〜。弥次「うめぇ〜なぁ〜」と、そこへ外国人が「エックス・キューズ・ミー。ゥライター・プリーズ」弥次「おっ、らいたー持ってねぇのかい。悪いヤツじゃなさそうだしなぁ。ホレ、点けてやる(シュポッ)」
外国人「センキュー」弥次「おいおい、喜多さんや、せんきゅーだってよ。なかなかいい発音じゃねぇか」
喜多「プッ、あったり前じゃねぇか。ユー・アー・ウェルカム、言ったのかい?」弥次「おぉ〜、忘れてたよ。(振り向いて)ゆー・あー・うぇる………、なんだ、もう、いねぇじゃねぇか。礼儀を知らねぇヤツだ」
喜多「礼儀を知らねぇのは、あんただよ」夜も更けたんで一行はタクシーでホテルに向かった。
黒人の運転手「○◆△※□……」喜多「○◆△※□」運ちゃん「○◆△※□……」
弥次「喜多さんや、おめぇもなかなかやるじゃねぇか、見直したぜ」
喜多「おっ!弥次さん、あそこがシェイ・スタジアムだぜ」弥次「シェ〜〜〜〜イ!!!!」2〜3日前まで猛威を奮っていた台風ボニーの影響が残り、霧でかすんだシェイ・スタジアムが二人の前に姿を表した。
弥次「それにしても奇麗な夜景だなぁ。極楽だぁ、こんなの見たこたぁねぇぜ」
運転手「○◆△※□……」弥次「ナヌ?あれが、ろっくふぇらーだと?ほんであれが、えんぱいあ・すてーとかい?きんぐ・こんぐはどこだ?いねぇ〜ぞ?それにしてもすげぇ〜な。ヒャァー。ところで喜多さんや、このテクシー、冷房はないのかね」喜多「日本みたいに快適じゃねぇのは確かだ」弥次「それとオレ達の目の前にある透明な衝立は邪魔だなぁ」喜多「これも日本と違って犯罪から運転手が身を守るための手段なのさ」
弥次「お〜、怖〜。これをみると気が引き締まるなぁ」約30分でホテルに到着しチェックインを済ませたのが午後9時半頃。
ホテルマンの書いた部屋番号204にたどり着いてカードキーを差し込むが一向にドアの開く気配がない。弥次「ったく、あめりかのいいかげんなカギは噂に聞いてたが、初っパナからこれかい?」喜多「おや?この数字“4”に思えるが“6”にも見えるぜ」弥次「そういえばそうだな。どれどれ、206号室は?」(カチッとドアが開いた)「てやんでぇ〜、へたくそな字、書きやがって」
部屋に入るやいなや荷物を置いてすぐさまコンビニへ。ビールとつまみを調達し無事到着のカンパァ〜イ。
TVではアトランタ対セントルイス戦(ESPN)、続けてメッツ vs ドジャーズ戦が入り、観戦しながら、長かった今日一日を振り返った。弥次「ところで喜多さんや、明日は……」喜多「ZZZZZZ……」
弥次「しょうがねぇ〜なぁ、まだ、オレより若けぇのに。寝息まで英語になってやがんの……オレも……ずずずずず………、むにゃむにゃ………」
二人とも寝たのは午前1時過ぎ。アメリカナイズされた喜多だが空っぽになった缶ビールをまるで自由の女神のようなポーズで握り締め、爆睡していた。★NEXT