MLB Tour '98

★アトランタ編 9月1日★
普段は朝がチョー苦手な弥次なのに、ここアメリカではなぜかお日さまより早起きである。ボストンとの別れが辛いのか、6:00頃(サマータイムだから日本だとホントは5:00頃なはず)目が覚めてしまった。

お土産を予想以上に買いすぎてしまったため、バッグはパンパンに張って、もう余裕が全くない。一方、喜多さんは旅慣れていることと、買い物上手なため、でかいスーツケースにはまだまだ入りそう。たが、スーツケース君は、前夜、ベッドから転げ落ちた喜多さんのボディアタックをもろに受けて具合が悪そうだった。

空港まで乗っけてくれたタクシーの運ちゃんは70歳が近いと思われる銀髪女性のエリザベスだった。やや動きにスムーズさはないが、ハツラツとしている。ステーションワゴンのタクシーに揺られ、周りの景色に目をやると、どんどん追い抜かれて行く。

信号で左隣りに停車したのはヘンリー(やや年下の男性)だった。
エリザベス「あぁ〜ら、お久しぶりね。元気そうじゃないの?」ヘンリー「そうさ。君こそ元気だね。どっちが長生きできるか競争だよ」なぁ〜んて会話をしてたか?・・・は定かでない。

空港外の喫煙所(見送りの車でゴッタ返していた)で一服していると、目の前の車が少し揺れた。どうやら追突事故である。シンディーの車が出ようとしてバックしたところ、停車していたボブの車にぶつかったようだ。
喜多「やっちまったよ」弥次「ボブのは結構新しいんじゃねぇか?頭抱えてるぜ」喜多「ちょっとヘコんでるな」
ちょっと間を置いて出てきて確認したシンディーが「(強い口調で)■▼÷〒△*♂♀■、コンニャロメ」
ボブ「△*♂♀▼、とほほ」その脇では別れを惜しむ家族が抱擁している。

喜多「アメリカの女性は強ぇ〜やぁ」弥次「なんて言ってたんだ?」喜多「きっと、これぐらい我慢しなさい。アンタ、男でしょ、みたいなこと言ってんだろ」

アトランタまでは約2時間30分。アメリカ南部の中心都市は意外にもこじんまりしていた(人口39万人)。
地下鉄(MARTA:マルタ)も東西と南北にそれぞれ1本ずつ走っているだけなので実にわかりやすい。我々の目指す駅は、その両線がほぼ交わる辺り。

駅から地上に出て、少し迷った揚げ句、人に聞くと目と鼻の先がピーチツリー・プラザ・ホテルだった。チェックイン後、41階の部屋に入ってビックリ。
弥次「オイオイ、喜多さんや、ここはダブルの部屋だぜ。なんてこった」
喜多「うっふ〜ん。だってぇ、せめてアメリカ最後の夜だけは弥次さんと同じベッドで過ごしたかったのよぉ〜ん」弥次「わ″、わ″、それ以上、近づくなぁ〜。こらぁ、シッシッ」と言うのは、喜多さんの名誉のためにも正直に言うが真っ赤なウソである。弥次喜多は急いでフロントに戻り抗議した。
新しいカードキーを貰い、ドアを開けると今度は間違いなくツインだった(笑)。

「円筒形でしかも世界第2位の高さ(最上階が72階)を誇る」とガイド本で紹介されている、このホテル、噂通りに高かった。床から天井までが窓になっているので実に見晴らしがイイのだが、窓際に立つと足がすくむ感じになる(右の写真)。

弥次喜多はミッポンを出る前から、ある作戦を考えていた。
2日分のチケットは、あらかじめミッポンでゲットしていたのだが(4階のバックネット裏)もう少しグラウンドに近い席のチケットが欲しかった。アメリカではホテルにコンシェルジュという宿泊客の御用聞きがおり、彼らに頼むとビックリするような席のチケットも入手可能と聞かされていたので、弥次喜多は休む間もなく、そこへと急いだのである。ただし、多少の出費は覚悟の上で。

喜多「どれどぉ〜れ、コンシェルジュ!っと、あぁ〜、あそこだな」
応対に出たのは黒人女性のバーバラ。
喜多「*■♂♀△*■♂」バーバラ「△*♂♀▼」のやり取りの後、どうやら、今日のチケットは適当なお値段($20.00)でゲットできた。
弥次「オォ〜、ばっくねっと裏かい。席はそんな近かぁねぇ〜が、少なくとも2階席とかじゃねぇし、まぁまぁじゃねぇか。それよりも明日だよなぁ」
喜多「うむ。当代唯一のベストピッチャー、ジョンソンとマダックスの先発対決は是非、間近で見てぇもんだ」バーバラは巧みにノートパソコンを操作しながら明日の空席を探している。

バーバラ「ミスター・喜多。△*♂♀▼」喜多「フンフン、ホンホン」
彼女は「この辺りよ」と、ターナー・フィールドのパンフレットに2種類の座席番号と値段を書いて我々に示した。
弥次「あすとろずのだぐあうと付近のほうがいいなぁ。値段もいいなぁ」喜多「$120.00かい。やっぱ、高けぇ〜なぁ。もう一方(普通の内野席)は$70.00だけど、ちょっとな」弥次「$120.00って言やぁ〜、1万7000円かい?悩むなぁ」喜多「バーバラ!ジャスト・モーメント・考えさせてぇ〜な」バーバラ「オッケー」

喜多「どうするよ、オイ」弥次「一生に一度あるかないかのビッグ・ゲームだもんな」喜多「ジョンソン様が見てぇ〜なぁ」弥次「をっし、わかった。まりなーずのファンをすっぱり辞めてまで、じょんそん様を追い求めるおめぇの姿が気に入った。清水の“てんぷる”から飛び降りたつもりで、いっちょ買ったるか」
喜多「よぉ〜し、そうすっか。(小声で)でも、俺はマリナーズのファンは辞めてねぇんだけど……」弥次「ん?何か言った?」喜多「いや、なんでもねぇ。たいしたことじゃ…」

無事、要件が済み、部屋に戻ると「あれれれ?雨だ」と喜多。
弥次「おぉ〜い、マジかよ」喜多「すげぇドシャ降りだぜ。おまけに雷も」弥次「うわぁ〜参ったな。まさか中止になったりしねぇだろうなぁ。今、何時だ?」喜多「午後4時だ」弥次「試合開始まで3時間半か」弥次は外を見渡しながら、指にヨダレを付け、気象状況を観測した。弥次「う〜ん、風と雲の流れを見た限りじゃ、ヤバイな。釣り師のオレが言ってんだから間違いない。きっと中止だ」喜多「ホントかい?そもそもココは部屋の中だぜ。エアコンの風で天気予報は出来ねぇだろ」

約1時間後、釣り師、弥次の予測は見事に“外れた”。すっかり雨も止み青空が見えてきた。

喜多「誰だっけ?胸張って雨で中止って言ったヤツは?」弥次「実は中止になれば、明日、$120.00の席で2試合見られるぞ!って、おめぇさんを喜ばそうとしたんじゃねぇか。この恩知らずめ。最初から晴れると思ってたぜ」喜多「そうかい、そうかい、それはありがとよ」

バーバラの話によると今日の新しいチケットは球場で貰えると言うことらしいので、午後5時半頃、いよいよ、ターナー・フィールドへ向けて出発。地下鉄と球場直通バスを乗り継いだ後、徒歩6分27秒で到着した。

弥次「うっわぁ〜、ターナー・フィールドのデカイ看板がお出迎えだぜ」喜多「あっち、見てみろよ、ハンク・アーロンの銅像だぁ」弥次「カメラ、カメラ、この銅像の前で写してくりぃ」喜多「ハイ、ソルト(バシャ)」弥次「おめぇさんも……あら、あら、なんじゃ、それは(喜多さんはアーロンがホームランを打ち上げたのと同じポーズを取っている)。もっと右に腰をひねらねぇとキャッチャーフライになっちまうぞ」喜多「いいから早く撮れっちゅうの(怒)」バシャ。

この後、肝心の今日のチケットを受け取ろうと思ったが、良く考えてみると、どこに行って、誰から貰えばいいのか全く確認してなかった。手がかりはバーバラが書いた座席番号の紙だけ。
喜多「多分、チケット売り場に予約をしてくれたんだ」と、その紙を持って売り場に行ったが、一向に埒が明かない。試合開始時刻も約1時間に迫り、球場の中では歓声もこだまし始め、弥次喜多は大いに焦り出した。

ホテルに電話してバーバラに連絡するが、話がうまく通じず、彼女に「近くにアメリカ人がいたら電話口に出して」と言われて喜多は、すぐそばを通り掛かった
白人男性のスコットを捕まえた。弥次喜多「へるぷ・み〜〜〜」スコット「*■♂♀△*■♂」バーバラ「△*♂♀▼÷」スコット「OK」

弥次喜多はひたすらスコットの後を付いていったところ、辿り着いたのが先ほど来たチケット売り場だった。
喜多「オォ〜、マイガ」弥次「??!!」

結局、未だに真相はナゾであるが、$20.00のチケットが手に入り、開始30分前、やっと席へ。

今夜のゲームはアストロズ対ブレーブス。
どちらかがWシリーズへ駒を進めると思われるため、このナマコでその強さをシッカリ見てやろうと思ってはいたのだが、なぜか明日のジョンソン対マダックスのことばかり頭にチラついて集中力がない。それと、球場に入るまでのゴタゴタが、かなり体力を消耗したのもひとつの原因かもしれない。疲れていた。

ジャンボドッグ(値段を忘れた)とビール($4.50)を仕入れ、弥次は、ひと足先に席へ着き、喜多が来るのを待った。
弥次「遅せぇ〜なぁ。どうしたんだろ?」喜多「お待ちぃ〜、おっとっと、ありゃぁ〜(バシャ)」
弥次「あぁ〜、麦酒、こぼしちめぇやがって」喜多「あちゃぁ〜」喜多のトレイ(灰色のダンボール紙製)の中にあったジャンボドッグはビールの洪水で溺れていた。被害は甚大である(笑)。
喜多「しゃぁ〜んめい、もう一回、買ってくるわ」弥次「今度は気をつけな」

国家斉唱の後、午後7:40、いよいよゲームは始まった。

弥次「それにしても奇麗な電光掲示板だなぁ」喜多「今まで見てきた中では一番クッキリしてるじゃねぇか」弥次「どこのメーカーだ?」喜多「ぱなそにっくだぜ」弥次「ミッポンもたいしたモン作るようになったもんだ。絵がハッキリ見えるもんな。いやぁ〜キレイキレイ」

弥次「昨日の第1戦は、9回表にひゅーすとんが3点を取って、ブレーブスの四天王の1人スモルツに土を付けてたのを知ってたか?」喜多「あぁ〜、知ってたぜ」弥次「なぁ〜んだ、がっかり。おりゃぁ〜よぉ、ホテルの部屋に配達された“今日の米国”(=USA TODAY紙のこと)っていう新聞で知ったんだけど、おめぇさんもそこを読んでたんだぁ」喜多「当たり前じゃねぇか。社会面や経済面は後回しにしてもスポーツ面を一番先に読まなきゃ“通”とは言えねぇぜ」

初回、アストロズ先頭のビジオがいきなりレフトスタンドにブチ込み、1点ビハインドで迎えた4回裏、ブレーブスの反撃が始まった。まず、C.ジョーンズがソロを叩いた後、ランナー二人を貯めて、バッターはJ.ロペス。
弥次「ろぺすが、ここ一週間で大暴れしてるみてぇだぜ」喜多「本当かい?」弥次「なんでも先週は5本の花火をドンパチしたらしい」喜多「どうりでファンの声援がひときわ高いもんな」弥次「だろ。次のA.じょーんずも最近打って…(パカァ〜ン)。おっ、行く、行く、入ったか!」喜多「3ランだ」
弥次「いやぁ〜さすが。レフトに上がる本物の花火もすげぇ〜、たぁまやぁ!」

※ターナー・フィールドのレフトにはコカ・コーラの瓶が突っ立てるのだが、これから花火が発射される。翌日の球場見学ツアーで、これを間近で見て驚いた。変わった素材で形作られていた。詳細は次ページで。

弥次「喜多さんや、ぶれーぶすは、もう地区優勝確実だし観客もあまり騒がねぇな」喜多「ZZZZZZ〜」弥次「おやおや、おねんねかい。今日はいろいろと慌てたもんな。しばらく寝かせてやるとするか。すこあに付けとくとするか。『喜多、5回 0/3で、のっくあうと』っと(笑)」

話し相手がいなくなったため、弥次は、以後、独り言をつぶやくしかなくなった。

弥次「まぐわいあが、56&57本だと?そう言やぁ〜、つい3日前までヤツもここでプレーしてたんだな、じーん。観客の反応も敏感だのぉ。おいおい、喜多さんや、打ったぞ、まぐわいあが」喜多「むにゃむにゃ、なに?打ったか。誰が?ガララーガ?そっか。おぉ〜、拍手〜。むにゃむにゃ」弥次「がららーがじゃねぇっつうのに、ったく。また寝ちまったよ。どれ煙草でも吸ってくっか」

弥次「まだ新しいなぁ。通路が広いぜ。そうだな、道路で言えば国道の3車線分ぐらいあるかな。さて、喫煙所は?おっと、あそこかぁ。結構、あちこちにあるじゃねぇか。しかも毎度おなじみ、灰皿なしだぜ」と、そこへ隣でふかしてたロバートが「ヘェ〜イ、アー・ユー・ジャパニーズ?」弥次「オレか?あっしはミッポン人でやんす」ロバート「(弥次のTシャツを指差しながら)ブレーブスのファンか?」
弥次「いぇ〜す。りーぐ・ちゃんぴおんはオッケーね(心の中で『けど、わ〜るど・ちゃんぴおんは遠慮しとくれ!ア・リーグにはRソックスっていう強えぇ〜チームがいるからよぉ〜』と言ってた)」
ロバート「オォ〜、グレート。応援頼むよ」弥次「ガッテン承知のすけ」ロバート「△*♂♀■」
弥次「(心の中で『ムムム?まじいな。これ以上の会話にはついていけねぇぜ。取りあえず、返事だけでもしとこうか』)おぉ〜、やぁ〜、ふんふん」
ロバート「△*♂♀■、バイバイ」弥次「(ホッとして)ばぁ〜い」

弥次「なんて、あめりか人って気さくなんだろ。気に入ったぜ、この国」

試合のほうは中盤、同点になって少しもつれたが、すぐまたブレーブスがリードして前日のお返しをした。

BOX SCORE

TEAM 3 4 5 6 7 8 9 R H E
HOUSTON 12
ATLANTA × 11

勝:ネイグル(14勝11敗) セーブ:ライテンバーグ(25)
負:エラートン(1勝1敗)
本塁打: HOU ビジオ(18号ソロ:1回)
     ATL C.ジョーンズ(32号ソロ:4回)
         J.ロペス(32号3ラン:4回)
主審:マイク・ウィンタース

気温:22.8℃ 天候:曇り 試合時間:3:06 観客数:31,168人


球場を出るとき、我々を見て何か話しかけてくるアメリカ人を発見。よぉ〜く見ると、バーバラの電話に替わって出てくれたスコットだった。彼は「無事、中に入れて良かったな。ゲームを楽しめたか?」とでも話してたんだろうか?

帰り道、まだ飲み足りない弥次は「喜多さんや、どっかでビールを調達して行かねぇか?」喜多「そうさな。でもこの辺り(ホテル周辺)にはコンビニが見当たらねぇぞ。おっ、あそこに『プラネット・ハリウッド』があるぞ。いっちょ入るか」弥次「よっしゃ」

ここは、映画スター(シュワちゃん、スタローン、B.ウィリスら)が共同オーナーとなっているレストラン。席についてビールとハンバーガーセットを注文したのち、店内を見て歩いた。映画で使用された衣装や車などが所狭しと展示されている。それらを写真に収めてテーブルに戻って驚いた。ハンバーガーが馬鹿でかい!しかもエスコートしてくれたジェニファーが「ごめんなさい、もうまもなく閉店なの」弥次「うぎゃ、どうやってこの量を短時間で食えってんの?」喜多「ジェニファー、ホテルに持ち帰りできる?」
ジェニファー「もちろん、オッケーよ」喜多「じゃぁ、お願い」
ジェニファー「わかったわ。ケースに入れてあげる」

弥次「助かったぜ」喜多「ほんじゃ、会計でもすっか。彼女にはチップを払っといたから」弥次「そっか、じゃぁ、ここは$36.00だな。どれ、$40.00出してっと、おつりください、ジェニファーちゃん」
ジェニファー「ノノノー、$40.00でいいのよぉ〜ん」弥次「???オ・ツ・リは? よんドルだよ、4ドル」
ジェニファー「サンキュー」
弥次「あれ?どうなってんの?ちっぷは別に払ったんだべ?」喜多「わかんねぇなぁ。でもいっか」
弥次「ま、いっか」未だにコレも真相がナゾである。アトランタは不思議な街だ!

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