MLB Tour '98

★アトランタ編 9月2日 その1★
弥次喜多のスケジュールは結構いい加減で、正式決定はほとんど前の夜だった。

2日のスケジュールも以下のようにして、前夜に決められた。
弥次「オイ、喜多さんや、明日はどうする?」喜多「おめぇさんの作った日程表ではどうなってる?」
弥次「午後4時には球場入り。それまでは市内観光でもすっか?って書いてあるぜ」喜多「随分、わかりやすい予定だな(笑)。じゃぁ、午前中は球場見学ツアー、午後はCNNの見学ツアーにでもするか」
弥次「そうだな、決まり!」喜多「ほんじゃ、寝るか」弥次「あいよ」てな具合。

実に単純で、計画性が全く感じられないと批判されても反論できない珍道中である。

さて、朝を迎え、まずターナー・フィールドの見学ツアーからスタート。
球場への専用バスは試合開始1時間半前以外、運行していないため、ジョージア・ステート駅で下車後、約20分歩き、途中、わずかに面影を残す(青色の高い外野フェンスだけが残っていた)フルトン・カウンティー・スタジアムの脇を通ってターナー・フィールドに到着。

$7.00でチケットを購入後、どこから入場してよいものかとキョロキョロしてたら、数メートル先のドアが開いて、アンソニーが手招きをした。入るとそこは“ブレーブス博物館”だった。アトランタに移ってきてからの歴史がまだ浅いとはいえ、90年代に入ってから築き上げた栄光の品々が所狭しと展示されていた。また、それ以前のボストンやミルウォーキー時代の古い遺物も多数展示され、なかなか楽しい。弥次の目を引いたのは95年のWチャンピオン・トロフィー。異様な輝きをしていたのが印象的である。

まもなく「全員集合!」の合図がかかり、ツアーガイドの23歳スティファニーが登場。喜多「いやぁ〜、かわいいなぁ〜」弥次「そうさなぁ、小柄で金髪でめんこいとくりゃ、俺の好みだぜ」喜多「おめぇさんにはもったいねぇ」弥次「うんにゃ、おめぇは昨日のジェニファーが好みだと言ってたじゃねぇーか」喜多「ダメ、ダメ」と喧嘩が始まった。そこへスティファニーの「さぁ〜、いい子ちゃんは、まず始めにオトイレに行ってきましょうネ」の言葉。弥次喜多「ハァ〜イ」

ココでも一通りのブレーブス・ヒストリーを可愛いスティファニーちゃんが一席ぶった。彼女は、時折、ジョークを言っては約10名の参加者を笑わせている。その中で、ただ一人、笑えない者がいた。そう、弥次である。耳を研ぎ澄まして一生懸命、理解しようと努力はしてるのだが、せいぜい愛想笑いしかできない。
弥次「ノバでもジオスでもいいから通うんだったなぁ。わけもわかんねぇのにヘラヘラ笑うのも情けねぇし、しょうがねぇ〜、無表情で通すとすっか。でも、かわゆいなぁ、ジェニファーは」

そんなことはどうでもよくて、ツアーは、まず、レフト最上段のスカイフィールドへ(入場料わずか$1.00。反対側のライトにもある)。ココは遊具がたくさんあり、弥次が見たところ、子供の遊び場のようである。それと、目の前にはでかいコカ・コーラのオブジェがあり、それを形作っているモノの正体を知って驚かされた。

弥次「うんぎゃ〜、ただの広告塔に見えたけどよぉ、バットやボール、ユニフォーム、ベースなどがパッチワークみたいに貼っつけられてたとはお釈迦様でも知らなかったぜ」喜多「しかも、この下には放送席があるぜ」弥次「本当かい?でも、怪しいなぁ。だって、こっから花火が打ち上げられるんだぜ。うるさくって実況どころじゃねぇだろ?」喜多「そういやぁ〜、そうだな。しかも放送席からはグラウンドが見えねぇしな」弥次「多分、子供達にアナウンサーのマネごとをさせて喜ばせるためのもんじゃねぇか?」

次に通されたのは「755クラブ」という高級バー。ココでも往年のスタープレイヤーの記念品が数多く展示されている。

弥次「ふぇんうぇいでもあったなぁ。こんなところで一度は飲み食いしてぇもんだ」喜多「特定の者しか入れねぇ場所だもんな。リッチな気分を味わえるんだろな」
※後述するが、これが現実のモノとなるんだから、人生、何が起こるかわからない。

この後、放送ブースと記者席を案内され、徐々に下の階へ降りて辿り着いたところがグラウンドへ抜ける通路だった。
すると突然、スティファニー「さぁ、手を上げて」一同、選手宣誓のポーズを始めた。
弥次「オイオイ『ひっとらー』とでも叫べばいいのかい?」喜多「バカだなぁ、これからグラウンドに出るから誓いを立ててくれと言ってるんだよ」弥次「なんの誓いだ?」喜多「芝生に上がらない約束とか、なんとかってしゃべってるじゃねぇか。それを復唱するのさ」弥次「そうだったのかい、だったら、ハッキリそう言えよ」喜多「そう言ってんだよ、このドアホ」

スティファニー「△*♂♀▼÷」他のアメリカ人「△*♂♀▼÷」弥次「?アポケパカプチョベ」

ホントは誓いたくなかったが、無理やり誓わされて(笑)いよいよ入場。暗いトンネルから抜け出る時のように徐々に外の明るさが目の前に広がってきた。弥次「ひょひょひょ、まるで大りーがー気分だぜぇ。出るときゃぁ、大歓声の壁を体に感じるんだろうなぁ。新人選手には、たまらねぇなぁ。をっし、俺も今日からナックルの練習して50歳の“でびゅー”でも目標にするかな。そうすりゃぁ、スティファニーとも毎日会えるし…」
ボカッ!弥次「痛えぇ〜」
喜多「何、寝ぼけたこと言ってやがんでぇ」弥次「何も殴るこたぁねぇ〜だろ」
喜多「目を覚まさしてやったんだ。礼のひとつでも言いやがれ」
弥次「ありがとよ…」

三塁側のダグアウトからバックネット前を通り、一塁側のダグアウトへ。
中はガランとして何もない。グラブかバットのひとつぐらいあってもいいのに(笑)。

弥次「おぉ〜、ココにまだっくす、がららーが、すもるつ、ぐらびん達が座ってんだな」喜多「おっ、写真を撮ろうぜ」弥次「あいよ。ポーズ取ってみな」喜多「こうか?」弥次「そうそう、ハイ、ソルト(バシャ)」両手を広げて背もたれにかけ、足を組むポーズを取った喜多さんの後ろにはアメリカ人がいた。彼らはこちらを向いて笑っていた。

この後、ブルペンを上から覗き、ライトにあるレストラン前を通り、最後はクラブハウス・ストアで知らないうちに解散となってしまった。

弥次は「ふぃるむが無くなったから、ちょっくら買ってくるぜ」と言い残して、レジへ。
弥次「(目の前にあったフィルムを指さして)あれ、くりぃ」黒人店員エレーヌ「400?100?」弥次「感度のことだな。400にしちくりぃ」エレーヌ「トエルブ・ダラー」弥次「とえるぶって言うことは、12だよな。12ドルはいくらだ?え〜っと、1700円?まっさかぁ〜! あのぉ〜、えれーぬさんよ、100に変えたいんだけど」エレーヌ「100は無いのよ」弥次「んもぉ〜、だったら。最初から400?100?って聞くなよぉ。でも、これがなきゃ、じょんそん様も写せないし買うしかねぇのか。もう、いいや、もってけ12どる!」
エレーヌ「サンキュー」

それにしてもフィルムが高いのにはビックリ。日本だったら、24枚3本でも千円でお釣りがくるのに。
皆様、フィルムはミッポンで買っていきましょう。

ブレーブス・グッズをたくさん買い込んで、一旦、ホテルへ戻ることに。

来た道をまたテクテク歩くのは辛い。それに暑かった。
喜多「バスでも来ねぇかな?」弥次「そうさな〜」喜多「オッ!」弥次「なんだ?」喜多「後ろからオヘソ丸出しのナイス・バディ・ジョギング・ギャルが2人来るぜ」弥次「なぬ?」喜多「こらっ、慌てて振り向いちゃダメ。それとあまりジロジロ見るなよぉ〜」弥次「う〜ん、見てぇなぁ。おめぇ〜さん、ずるいよ。どうせ追い抜いていくから前を向いてよっと(ワクワク)」(後ろからスタスタと足音が聞こえる、それと共に弥次の鼓動は速くなった)

通り過ぎる瞬間、ほのかな香水の香りが…。後ろ姿はまさしくムッチンプリンの健康優良児だった。
弥次「わぁ〜おぉ〜」喜多「ナニ、ヨダレ垂らしてんだよ」弥次「いや、暑いもんで口から汗が」
喜多「来た、来た」弥次「またかい?」喜多「馬鹿、バスだよ、バス。走れぇ〜」

どこに行くのかも知らずに弥次喜多はバスに飛び乗った。中は女性もたくさん乗っていることから安心できそうである。弥次「このバス、どこまで行くんだ?」喜多「たぶん駅まで行くだろ」弥次「へぇ〜、おめぇさんの方向音痴は折り紙付きなのにエライ自信だな」喜多「……」

喜多さんの言葉を“信じないわけではないが”どうしても確認したかった弥次は目の前の黒人女性ナオエ・キャンベルに尋ねた。
弥次「靴墨(くつずみ)」喜多「なんだそりゃ?」弥次「えくすきゅーずみーの事だよ」喜多「ふ〜ん。それ以上、ネイティブな発音ができるのか楽しみだぁ」
ナオエ「何?」弥次「う〜ん、そのぉ〜、じす・ばす・すてーしょん・すとっぷするあるか?」ナオエ「イエス」弥次「ほんじゃ、その時、てぃーちして(教えて)ちょうだい?」ナオエ「(やや考えて)オッケーよ」

弥次「おい、喜多さんや。教えてくれるってよ」喜多「そりゃ、良かった」

まもなくバスが止まると乗客全員が降り始めた。ここからは弥次の独り言。
「あれぇ?終着なのか。だったら教えて貰わなくても済んだんだんじゃねぇか。まぁ、降りるとすっか。(スタスタ)なんだ、駅もすぐそこだぜ。こりゃ助かったわい。おっ?ナオエさんがいるぞ、しかも手招きしてるぜ。なんだろ付いていくとするか。それにしてもスラッとした長身だな。六尺弱(180cm)はあるな。モデルのナオミ・キャンベルに似てるんじゃねぇか(←ココんとこ実にワザとらしい)どうして俺達の前を歩くんだろ?おぉ〜改札口まで来ちまったぜ。そっか、彼女は乗り場まで案内してくれと勘違いしたんだな。ありがてぇ〜なぁ。
俺の英会話はパーフェクトだったのに聞き間違えるとは。ひょっとして俺に“ほ”の字かな?」
そこへ喜多のパンチが飛んできた。バギッ。

喜多「おめぇ〜の独り言をずっと聞いてきたけど、何、バカなこと言ってんだ。これが“サザン・ホスピタリティ”ってやつだよ」弥次「さざん・おーるすたーずなら知ってるけどよ、それはなんだ?“南部病院”が、この近くにでもあんのかよ」喜多「バカ!アメリカ南部の人は外部から来た人に対しても温かく接してくれるんじゃ、そのもてなしの心のことを言うんじゃわい」弥次「ごみん」

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