夜中の2時、グラッと揺れる。岩手県沖を震源とする地震だ。震度2だったそうだが、思いの外、揺れたので飛び起きた。やはり8階の高さで感じるのと自宅の2階では違うのか?
日中、同室の西島さん(60代)と大林ナースの会話が聞こえた。 「大林さん、一度でいいからウチの息子と会ってみてよ。親が言うのもなんだが、いいヤツだよ」 西島さん本人が大林さんを非常に気に入った様子で、息子のお嫁さん候補になってしまったらしい。どうやらこのあと、主任看護師の渡辺さんから「大林さんにはお付き合いしている大事な人がいるので、申し訳ないけどお断りさせてください」、続いて大林さん本人の口からも丁重に断られ、西島さん、ガックリ。 |
午前10時、今日から1週間の治療がスタートした。 |
以前、テレビの音がうるさいですよ!と、ひと言いわせて貰ったとっちゃが、状態が悪くなったため、個室へ引っ越していった。 |
投薬6日目。昼ごろから両足にかゆみが出る。特にアキレス腱がかゆくてかゆくてどうしようもない。しかし発疹らしきものは見当たらず、ナースに報告だけはしておいたが、夜になってついに出た。はしかのような小さなプツプツが足だけでなく腕にも出てきた。かゆみ止めの注射を打つ。
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近ごろ、CVカテーテルが詰まりを起こすトラブルに見舞われ、その都度、ナースの努力によってなんとか開通してきたが、今回は糸切れトラブルとなった。 カテーテルの通りが悪くなっている事などを判断して、いっそのこと交換も考えられるが、出来れば、糸の縫い直しのみにしたいらしい。 結果はやはり縫い直しだった。キューンとくる麻酔を胸に一発受けて、あとは何も感じず、約15分で終了。 |
2回目の治療が終わって3日目、白血球がかなり下がった。両手両足のかゆみの他に多少の下痢症状が起こったが、さほど体調が悪くもならず苦しくない。食欲不振はおろか、逆に食欲がありすぎるので、抑えて食べないと体重増加になってしまうのが悩みの種。体重コントロールは重要で、移植の際、体重に応じて骨髄液の量が決まる。運動不足と間食のために入院時より10キロも太ってしまった人がいるらしい。それにしても病院で肥えるとは普通じゃ考えられない。見舞いに来た人が驚くのではなかろうか?
隣りの笹原君の頭に発疹(移植後のGVHD)が出て、非常にかゆいらしく、ストレスがかなり溜まっているようだ。彼は私の右隣のベッドだが、左隣の加藤さんのイビキがひどいため、しきりに物を叩いて止めさせようとする。 |
過ごしやすかった病室も初夏の雰囲気となり、陽が良く射す我が病室はムンムンしてきた。 |
昨日、ポッカリ空いていた真ん中のベッドが突然、埋まった。 自分が入院してから3人目の患者がやってきた。前の2人は2週間ほどで退院可能な糖尿病患者だったのだが、今回は様子が違う。入院すること自体、本人にはとても不幸なので明るい表情の人はまずいないが、約2ヶ月に及ぶ入院生活で、この患者は血液疾患か、糖尿病かの判断が出来るようになった。血液だと直感したので、そっとしておいた。 日が変わって、朝の挨拶がキッカケでその方と会話するチャンスが生まれた。
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どうも気になっている人がいた。 洗面所で用が済んで自室に戻る時、他の部屋の様子が目に入るが、自分と同じパワーブックG4をテーブルの上に置いている人がいた。患者さんのほとんどはウィンドウズ。病棟には約60名ほどが入院しているが、その中の10名弱がパソコンを持ち込んでいるようだ。仲間をみつけた気分になり、親近感を持ってしまったのだ。部屋の入り口に掲げられているネームプレートを見ると「名良橋」と書いてある。 その名良橋さん(40代)と今日、洗面所で一緒になったので思い切って声を掛けてみた。 とまぁ、こんな会話に始まって、お互いの病気に話が及ぶと、なんと同じMDSで、入院時期も同じ6月で、いろいろと共通点が多いのが判明した。マック使いはMDSになりやすいのかな?などとウソともホントとも言えない冗談で盛り上がった。 |
治療が終わってから11日目。白血球数、三ケタ台がずっと続いている。
患者の間では白血球を増やすには「でんろく豆」を食べ、血小板を増やすには「柿の種」が良いという迷信があると笹原君から聞かされた。治療によってグンと下げられた白血球が回復する推移を患者も医者も目を凝らして見守る毎日が続くのだが、低い状況が続くと、神経質にならざるを得ない。
洗髪時の抜け毛が気になり出した。シャワーすると排水口に束になって抜け落ちている。聞いてはいたが、やはりショックだ。黒髪が命の女性なら、なおさらだろう。 2回目の治療を無事終えて、あまり体調も悪くならなかったため、良いほうに解釈して、自分は坊主頭にならないんじゃないか?と思っていた。でも、シャワーでなく、指で髪をすくっても抜けるのだから、いよいよ私の体の中には秋風が吹き始めたらしい。とほほ。 |
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