明け方、窓の外でフラッシュが何度も光る。ピカピカピカ!レースのカーテン越しに稲妻が良く見える。光ったとほぼ同時にゴロゴロゴロ〜。雷の被害に遭った方にはまことに申し訳ないが、写真を撮りたくなる光景が何度も繰り広げられた。
実は午前中から少し痛んでおり、よほど白木先生に伝えようかと思ったんだが、あの悪夢(胃内視鏡検査)が甦り、怖くて言えなかった。 背筋を伸ばすと病んでくるため、猫背になってしまい、実に格好が悪い。 しかし黙ってもいられず、ついに告白。 数多い内服薬がある中で更に胃薬「マーズレーン」が追加になった。この薬のほかに、自分で牛乳を買い、朝晩200ccを飲んでもみた。しかし、これらの効果もあまりなく、夜は眠れなくなってしまったので、ナースより眠剤アモバンを出してもらった。この眠剤、効き目バッチシで、あれほどキリキリしてたのをすっかり忘れるぐらい、グッスリ眠らせてくれた。 |
朝の回診で白木先生が私を見るなり、驚いた様子で 4人部屋の中で2人が外泊中なため、山田さん(50台前半)と二人きりになった。 山「マルクの針って太いんだよな」 夜、両手指先がシビレてきた。これはオンコビンの仕業に間違いない。3回目の化学療法に入る時、例のアニメキャラクターみたいな声を出す薬剤師のお姉さんにオンコビンの説明で「まれにシビレの出る患者さんもいます」と言われたっけ。自分は、その“まれ”の人間だったのだと理解した。 抗ガン剤だと聞いて、それを点滴スタンドにセットしただけで急に吐き気が出る人もいるという。自分は幸いにもそのようなことがなく、ラッキーかなと思っている。 |
「万が一だけど、お父さんと適合している可能性がないわけでもないよね、今度、白木先生に話してみるね」という。とはいえ、入院の時、先生とは親子で適合する事はまず無いと話し合っていたため、またまたぶり返したように渡辺ナースの口から言ってもらうのも申し訳ない。 よって、翌13日、自分のほうから先生に言ってみた。 「息子にドナー適合の通知が来たのですが、先生が患者申請した時にリクエストした『迅速コース』でお願いできないかと、妙に共通点が多くて、ちょっと気持ち悪いんですよね」 先生の言いたいことはわかっていた。データも何もない状態ではコメントのしようがない。 ※迅速コースとは、移植を急ぐ患者のために設けられたコースで、標準コースだと半年近くかかる移植を目標値80日に設定して行なうというもの。私が患者申請した時はまさに「迅速コース」で申請した。 |
たまにはいいかなと、麻雀ゲームをネットからダウンロードしてみる。一時期は、任天堂のファミコンで麻雀ゲームをよくやったもんだが、やがて飽きがきた。それ以来だろうか? 解凍して、早速、遊んでみる。オオォ〜、なかなか手ごわいではないか? あっ、そんな安い手でロンするか? ずるくない?それって。 あぁぁぁ〜〜〜、ハネ満振っちゃったぁ〜〜(泣)
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約40日ぶりの外の空気が吸えると思うと、ワクワクする。 少しでも早く出たいのだが、前回同様、壁が待っていた。 朝の回診時、ニヤニヤする自分に先生の言った言葉は以下。 ひゃぁ〜、まいったなぁ。ということは、血小板に1時間半かかり、赤血球に3時間だからスムーズにいっても4時間半?病院への輸血バッグ到着が、早くて11時過ぎだから、あらら、5時ごろになっちゃうジャン!ま、しょうがないか?今日は家にまっすぐ帰って、ビールを飲むだけにするか? 名良橋さんの移植が11月中旬に決定。あ〜、先を越された〜。でも、おめでと。頑張ろうねぇ〜。 ※笹原君、15日に再入院するが12日間の治療で退院。 |
朝食を食べ終えた時、廊下が急にバタバタと慌ただしくなった。普段、笑顔を絶やさないナースが真剣な表情で、ある部屋に入っていく。その部屋とは私のいる部屋のすぐ隣り、移植のために使われる準無菌個室である。
大掃除でもしない限り、開け放たれることのないドアが全開し、机や椅子などが廊下に搬出され、ドアの前にはついたてで目隠しされた。もう誰もが大変な出来事が起きているとわかり、沈黙が走った。 医師が二人入り、懸命の心臓マッサージが始まった。壁越しに緊迫したやり取りが聞こえる。グッ、グッ、グッという一定のリズムで繰り返される音が良く聞こえ、まもなく駆けつけた家族の叫び声が加わった。 「帰ってこい!帰ってこい!」「そっちさ行くな!」「○○○!、こっちさ戻って来い!」 約1時間。果てしなく続くと思われたマッサージがピタリ止まった時、叫びは大きな嗚咽に変わった。 自分の周りには退院する人が溢れ、信頼して治療さえ受けていれば、その仲間になるものだとばかり思ってた。 |
先週、外泊し、今週も外泊することになった。 そんないきさつがあって、オーケーが出たのだった。白木先生に限らず、血液内科の先生達は外泊を可能な限り積極的に許可するらしい。なにせ8ヶ月近くの長丁場。患者のストレスを蓄積させない良いクスリは「外泊」なのである。 なお、山田さんが翌30日にめでたく退院となり、あいにくその時にお別れできないのが少し心残りだった。しかし、それもほんの3週間弱で舞い戻ってくるのだから、あまり深く考える必要もなかった(笑)。
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